Travel to Arizona 15.

『ゴルフショップオカムラのピンUSA本社取材旅行記 その15』

【シャフトやヘッドの挙動を捉えるモーションキャプチャー】
「PING MAN」の後に案内されたのは「モーションキャプチャールーム」。

スイング中のシャフトやヘッドの動きを専用のマーカーとキャプチャー※1で感知し、
得られた情報をコンピューターで解析していきます。

ここで得られた解析情報を元に、
「より安定した挙動を生み出すにはどこを改良するべきか?」
といった議論が行われるらしく、ここもピン本社中屈指のハイテク施設でした。

これはクラブの挙動が映し出されるモニター。
担当の方がクラブを動かすと、それに応じてモニター内の
クラブも動き回るのがちょっと気味悪かったです(^_^;)

こちらがドライバーのヘッドに取り付けられたマーカー。
このマーカーの動きをコンピュータが取得して画面に表示するわけです。

マーカーは幾つでも付けることはできるそうなのですが、
ドライバーで4つ、アイアンで3つ以上装着してしまうと、
マーカーの重量や空気抵抗の影響で正確なデータが取れないんだよとのこと。

この写真だとシャフトにもマーカーが付いているのがわかりますね。
ピンでは当然様々なシャフトでテストしているそうなのですが、
この時はフジクラのシャフトでもテストしているよと話していました。

アイアンやウェッジの場合はトップブレードにマーカーが装着されます。
昔はドライバーにしかマーカーを装着できなかったそうですが、
最近は技術が進んでアイアン、ウェッジにも装着できるようになったとのこと。
よく見るとホーゼル部分にもマーカーが付いていますね。

最後にハンター・メイハンのスイング動画を見せてくれたのですが、
スイング軌道の無駄の無さと滑らかさに驚きました。
スタッフの方も「彼のスイングは非常に美しい」と感心していましたね。

ちなみに、前ページで説明した「PING MAN」と違い、
このモーションキャプチャールームに関しては全く事前情報がありませんでした。
そんな経緯もあり「こんなことまでやっているのか!」という驚きは大きかったです。

こういうのはもっとどんどん宣伝してもいいと思うんですが、
「品質さえ良くなればお客さんはちゃんとわかってくれる」
というスタンスを貫いているのはピンらしいな〜と思います。




【ピンのメジャー制覇歴が一目瞭然!】
さて、続いて訪れたのがパターラボ。
「ピンといえばパター」というお客様は多いと思いますが、
ここはそんな期待を満たしてくれる(ピンファン垂涎の)スポットでした。

まず出迎えてくれたのはクラシックなピンパター達。
ブロンズの『1-A』に『69』などピン草創期を彩る名器がズラリ。

続いてこちら(↓)は4大メジャーを制覇したピンパターとその使い手、
優勝年度をまとめたオリジナルのボードです。

'69年のマスターズを制覇したジョージ・アーチャーはブロンズ『アンサー』を使用。
これがピン初のメジャー制覇となりました。

同年トニー・ジャクリンも『A-Blade』で全英オープンを制していますが、
彼はこの年のライダーカップ(米欧対抗戦)で15メートルのパットを決め、
ライダーカップ史上初の「引き分け」に持ち込んでいます。

この時、最終ホールでニクラウスがジャクリンの最終パットを「OK」した、
ザ・コンセッション」という心温まるエピソードも有名ですね。

圧巻なのはトム・ワトソン。彼はメジャーを通算8勝していますが、
右手にはいつもピンのパターが握られていました。
A-Blade』と『PAL』が彼の愛用パターだったようです。

さて、ピンパターで最も勝利数を稼いだ男といえばセベ・バレステロス。
彼もワトソンと同じく、メジャー制覇時には必ずピンパターを手にしていました。
ニクラウスにゲイリー・プレイヤー、トム・ワトソンにバレステロス。
当時の一流プロでピンに触れていない者はいないと言っても過言ではないでしょう。

また、この写真(↑)には'86年の全米プロでノーマンを下したボブ・ツエーの名前も。
EYE2アイアンで放った起死回生のバンカーショットがよく取りあげられますが、
この大会で彼が使用していたのはオーソドックスな『アンサー』でした。

当然ながら、ピンのゴールドパタールームにはツエーがチップインした時に
使用したEYE2ウェッジだけでなく、このアンサーも保管されています。

'99年、飛行機事故で悲運の死を遂げたペイン・スチュワート。
死の10年前、彼が初めてメジャーを制した際に使っていたのもピンパターでした。
この時彼の手に握られていたステンレスの『アンサー2』は、
タイガー・ウッズの全米アマ優勝パターとしても有名です。

イアン・ベーカーフィンチにカプルス、ノーマン、エイジンガーにエルス、
スティーブ・エルキントンにデービス・ラブ3世、マーク・オメーラ。
彼ら1990年代に活躍したプロは全て『アンサー』でメジャーを制しています。

もちろんその他のパター(ジングやB60など)も十分活躍していますが、
メジャー制覇したパターとなると「アンサー」が圧倒的。
それだけツアープロに愛用されていた証と言えるでしょう。

そして時は経ち…
2014年度だけで『アンサー』はメジャー2勝を挙げました。
1969年のメジャー初勝利から50年近く経過したにも関わらず、です。

発売以来、一度たりとも止まることなく勝利数を増やし続ける『アンサー』。

メジャー制覇者とその使用パターを並べただけのこのボードに、
管理人はピンというメーカーの「凄み」を感じてしまいました。

基本的なデザインに変更が無いまま、50年以上の長きに渡って
プロスポーツの一線で活躍し続ける製品が果たしてあるでしょうか?


ピン創業者のカーステンさんは『アンサー』が完成した際に

「これが答えなんだ。」

という思いを込めて『アンサー』と名付けています。

このボードは『アンサー』が「パッティングのアンサー(答え)」であることを、
何よりも雄弁に語っている気がしました。




【ディンプル無しのボールでテストするピンのパターラボ】
さて、そんな思いを馳せながらチャンピオンボードに見とれていた管理人を尻目に、
ピン本社の見学ツアーはどんどん進んでいきます。

こちらはチャンピオンボードの奥にあるパターの開発ラボ(研究室)。
人工芝でできたマットの下には5枚の黒大理石(!)が敷かれており、
完全な水平が保たれている※2とのこと。

部屋が薄暗くなっているのは…

ご覧のようにレーザーで垂直なラインを描き、
その上をきちんとボールが転がるかチェックするためのようです。

写真中央、黒い服の方がプレゼンを担当してくれたジェレミーさん。
パターという道具は非常に精密なものなので、
開発環境にも最新の注意が払われている、とのこと。

例えばテストに使うボールですが…

このように、全くディンプル(表面の凹凸)が無い特注のボールも使われるそうです※3
厳密にテストを行う場合はこのボールを直接大理石の上でパッティングするとのこと。
う〜ん、想像するだけでまともに転がってくれなさそうですね。

またこちらはボールが転がる様子をハイスピードカメラで撮影したもの。
スピンの速さやボールの回転のねじれ、インパクトで僅かにバウンドしている様子など、
パット直後に起こるボールの挙動が一目瞭然になっています。

ジェレミーさんはプレゼンの中で、

iPINGの登場で、ゴルファーは感覚頼りではなく
  明確な数値を元に
最適なパターを選べるようになった」

と話してくれたのですが、これを聞いた管理人は思わず
「う〜ん、確かに」と頷いてしまいました。

このラボのような専門的な設備のある場所でしか得られなかった情報を、
いまやiPhoneとクレードルがあれば簡単に得ることができるわけです。
それは素晴らしい進歩だと思うし、ぜひ有効に活用して欲しいと思いますね。

プレゼン終了後は質問タイムがあったので、
管理人はちょっと変わった質問をしてみました。

「そこにブロンズの『1-A』がありますが、
  最新モデルとの数値的な違いはどの程度あるのでしょうか?」

と聞いてみたところ、ジェレミーさんは少々ハッとした様子で

「いい質問ですね。
そう言われてみると1-Aほどクラシックなモデルと
最新モデルの比較はしたことがありませんでした。
ただ、最新モデルの方が数値面で大きく向上しているのは間違いないでしょう」

と答えてくれました。

普段の業務でピンゴルフジャパンの方に質問することは多いですが、
上記のようなマニアックな質問はなかなかできません。

その都度アメリカ本社へ確認を取るので返答に時間もかかりますし、
多忙なスタッフにマニアックな話題で対応してもらうのはやはり恐縮しますしね。
なので、今回のように気軽に質問できる状況は本当に嬉しかったです。

ジェレミーさんはこちらから質問があったのが嬉しかったのか、
(日本人主体のツアーではなかなか質問が出ないそうです^_^;)
色々と最新モデルの特徴などについてお話をしてくれました。
その内容は当サイトの商品紹介ページにもちょこちょこ反映されています。

(2015年6月27日追記)
ピンUSAの公式Facebookでこのパターラボの360度ビューアが公開されました!
我々が見学した空間をリアルに体験できますので、ぜひご覧ください!




【ついに登場!ゴールドパタールーム!】
さて、ジェレミーさんに見送られて次に向かうのは、
ピンパターが優勝するたびに作られる金のパターを集めた「ゴールドパタールーム」!

「こんなモデルも優勝してたのか!」
「この人もピンのパターを使ってたの?」

と驚くこと間違いなしの内容になっておりますので、お楽しみに!
ピンの歴史や伝統がそのまま保管されているかのような、素晴らしい空間でした!




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